2026年11月、東京・上野にオルセー美術館の名作がやってきます。
東京都美術館の開館100周年を記念して開催されるのが、「オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び」です。
オルセー美術館といえば、印象派や19世紀美術を代表する世界屈指の美術館。今回の展覧会では、そのコレクションから絵画・彫刻・工芸・写真など約110点が来日します。
注目作品
なかでも注目したいのが、フィンセント・ファン・ゴッホ《星月夜》、ジャン=フランソワ・ミレー《落穂拾い》、ポール・ゴーガン《アレアレア》、ギュスターヴ・カイユボット《床削り》、ピエール=オーギュスト・ルノワール《浴女たち》といった名作です。
ゴッホの《星月夜》は16年ぶり、ミレーの《落穂拾い》は23年ぶりの来日。これだけでも、2026年を代表する大型展のひとつになりそうです。
この記事では、出品作品や見どころ、開催期間、チケット料金、お得なチケットの買い方まで詳しく紹介します。
「オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び」とは?
展覧会の正式名称は、東京都美術館開館100周年記念「オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び」です。
会場となる東京都美術館は2026年に開館100周年。一方、パリのオルセー美術館も2026年に開館40周年を迎えます。この二つの節目を記念して企画されたのが今回の展覧会です。

テーマはタイトルそのまま、「いまを生きる歓び」。19世紀は、鉄道や工業の発達、都市化などによって人々の生活が急速に変化した時代でした。
それまで歴史や神話などを描くことが中心だった美術の世界でも、身近な風景や働く人々、家族、余暇、都市生活など、「いま目の前にあるもの」が重要なテーマとなっていきます。
本展では、そんな時代を生きた芸術家たちが見つめた日常のささやかな歓びを、約110点の作品からたどります。
見どころ① ゴッホ《星月夜》が16年ぶりに来日

今回、僕が特に注目しているのがフィンセント・ファン・ゴッホの《星月夜》です。
1888年、ゴッホが南フランスのアルルに暮らしていた時代に描かれた作品です。
夜のローヌ川。水面には街灯の光が長く反射し、その上には深い青の夜空と星々が輝いています。手前には二人の人物が描かれています。
ゴッホ自身が弟テオへの手紙の中で「恋人たち」と呼んだ二人です。ゴッホは夜について、昼間よりも生き生きとして色彩豊かだと考えていました。その感覚がよく分かる一枚です。青い空に黄色い星と街灯。補色に近い色を強くぶつけながら、夜景全体を光で満たしています。
ニューヨーク近代美術館の《星月夜》とは別の作品
ゴッホ好きなら少し注意したいところがあります。
一般に「ゴッホの《星月夜》」として非常に有名なのは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)が所蔵する1889年の作品です。
この有名なMoMAの《星月夜》については、ゴッホ《星月夜》徹底解説で詳しく紹介しています。
しかし今回来日するのは、それとは別の作品。オルセー美術館所蔵の1888年の《星月夜》で、一般には《ローヌ川の星月夜》とも呼ばれています。
サン=レミ時代の激しく渦巻く夜空とは違い、こちらは比較的穏やかな夜。ゴッホがアルルで色彩表現を大きく発展させていた時期の重要作品です。
今回の来日は16年ぶり。日本で実物を見る機会は、かなり貴重です。
見どころ② ミレー《落穂拾い》は23年ぶりの来日
もうひとつの大きな目玉が、ジャン=フランソワ・ミレーの《落穂拾い》です。

作品データ:《落穂拾い》/1857年/油彩・カンヴァス/83.5×110cm/オルセー美術館蔵
描かれているのは、収穫後の畑に残された麦の穂を拾う3人の女性。一見すると静かな農村風景ですが、19世紀フランスの社会を考えると作品の意味が変わってきます。
当時、収穫後に残された落ち穂は、土地を持たない貧しい人々が拾うことを認められていました。遠景には大量の麦が積み上げられています。その豊かさとは対照的に、画面の手前では3人の女性たちが一つ一つ穂を拾っています。
しかしミレーは、彼女たちを単に「貧しい人」として描きませんでした。大地に根を張るようなしっかりした身体。単純化された力強いシルエット。そこには、働く人間への深い敬意が感じられます。
美術史の教科書で一度は目にしたことがある作品ですが、実物の《落穂拾い》を見る機会はそう多くありません。今回は23年ぶりの来日です。
実物を見る前に作品の背景を知っておきたい方は、ミレー《落穂拾い》の意味・構図・当時の評価を詳しく解説した記事へ。画家ミレーそのものを知りたい方は、ミレーは何がすごい?農民画の巨匠と呼ばれる5つの理由もあわせてどうぞ。
見どころ③ ゴーガン《アレアレア》も来日
ポール・ゴーガンの代表作のひとつ、《アレアレア》も出品されます。

作品データ:《アレアレア》/1892年/油彩・カンヴァス/74.5×93.5cm/オルセー美術館蔵
制作は1892年。ゴーガンがタヒチに滞在していた時期の作品です。遠近法に従って現実をそのまま描くのではなく、平面的な形と鮮やかな色彩を組み合わせています。
ゴーガンの作品は、その後のナビ派やフォーヴィスムなどにも大きな影響を与えました。《アレアレア》も、日本ではめったに見られない作品です。ゴッホ、ミレー、ゴーガンを同じ展覧会で見られるのは大きな魅力です。《アレアレア》の赤い犬・題名の意味・背景の祭祀まで詳しく知りたい方はこちらで、実物を見る前のポイントをまとめています。
見どころ④ カイユボット《床削り》
個人的にとくに見てほしいのが、ギュスターヴ・カイユボットの《床削り》です。

作品データ:《床削り》/1875年/油彩・カンヴァス/102×147cm/オルセー美術館蔵
1875年の作品で、室内で木の床を削っている労働者たちを描いています。
カイユボットは印象派展にも参加した画家ですが、モネやルノワールとは少し違い、非常にシャープな構図を得意としました。《床削り》も、手前から奥へと伸びる床板によって強烈な遠近感が生まれています。
さらに注目したいのが題材です。農民を描く作品はそれ以前にもありましたが、近代都市で働く労働者をこれほど大きな画面の主役にすることは、当時としては新しい試みでした。
「働く」という日常そのものが、美術のテーマになっていった時代を象徴する作品です。サロン落選の理由、3人の上半身裸の労働者、床板がつくる強烈な遠近法については、カイユボット《床削り》徹底解説で詳しく紹介しています。
さらに、《パリの通り、雨》や《ヨーロッパ橋》まで含めて「なぜカイユボットが近代都市の画家として重要なのか」を知りたい方は、カイユボットは何がすごい?近代都市を描いた5つの理由もあわせてどうぞ。
見どころ⑤ ルノワール、シニャックなども
もちろん、見どころはこの4作品だけではありません。
公式発表されている作品には、ピエール=オーギュスト・ルノワール《浴女たち》、ポール・シニャック《アヴィニョン、夕暮れ(教皇宮殿)》、カミーユ・ピサロ《洗濯物を干す女性》、モーリス・ドニ《メルリオ一家》などもあります。
今回来日する《浴女たち》が、なぜルノワール晩年の集大成とされるのかは、ルノワール《浴女たち》徹底解説で、モデルや《大水浴図》との違いまで詳しく紹介しています。

作品データ:《浴女たち》/1918-1919年/油彩・カンヴァス/110×160cm/オルセー美術館蔵

作品データ:《アヴィニョン、夕暮れ(教皇宮殿)》/1909年/油彩・カンヴァス/73.3×91.9cm/オルセー美術館蔵

作品データ:《洗濯物を干す女性》/1887年/油彩・カンヴァス/41×33cm/オルセー美術館蔵

作品データ:《メルリオ一家》/1897年/油彩・カンヴァス/118.5×110.6cm/オルセー美術館蔵
さらに本展では絵画だけではなく、彫刻、写真、工芸まで展示。エミール・ガレのガラス作品なども紹介されます。
「有名な印象派絵画を集めただけの展覧会」ではなく、19世紀から20世紀初頭の人々の暮らしそのものを幅広く見せる構成になっているのが特徴です。
展覧会は「全7編」で構成
今回のテーマは「いまを生きる歓び」。
展示は人生のさまざまな場面を扱う全7編で構成されます。
プロローグでは「ダンス」をテーマに、絵画だけでなく彫刻や写真なども展示。
さらに、働くこと、食べること、休むこと、家族と過ごすこと、自然を楽しむことなど、人間が日々の暮らしの中で感じてきたさまざまな歓びを見ていきます。
社会やテクノロジーが大きく変化した19世紀。そしてAIをはじめとするテクノロジーによって生活が変化している現代。100年以上前の作品ですが、意外と今の僕たちにも近いテーマなのかもしれません。
展示空間にも注目
今回は作品だけではなく、展示空間にも力が入っています。
会場デザインを担当するのは、フランスで活動するセノグラファー、セシル・ドゥゴ。
オルセー美術館などでも展示空間を手がけてきた人物です。
単に白い壁に作品を並べるだけではなく、「いまを生きる歓び」というテーマそのものを体験できる展示空間になる予定です。作品と空間がどのように組み合わされるのかも楽しみです。
オルセー美術館展2026の開催期間・会場
| 会期 | 2026年11月14日(土)〜2027年3月28日(日) |
|---|---|
| 会場 | 東京都美術館 企画展示室 東京都台東区上野公園8-36 |
| 開室時間 | 9:30〜17:30 金曜日は20:00まで 入室は閉室30分前まで |
| 休室日 | 月曜日を中心に休室日があります |

年末年始にも長期休室がありますので、遠方から行く場合は事前に公式サイトで最新情報を確認しておくことをおすすめします。
チケット料金:現在は前売券を販売中
通常の一般料金は2,400円です。前売券は2,200円。
そのほか、大学・専門学校生は通常1,300円/前売1,100円、65歳以上は通常1,600円/前売1,400円となっています。
18歳以下・高校生以下は無料です。
現在は前売券を販売中です。一般の当日料金は2,400円ですが、前売券は2,200円です。開幕前にオンラインでチケットを準備できます。
一般前売券は当日料金より200円安く購入できます。大学・専門学校生、65歳以上にも前売料金が設定されています。
前売券なら開幕前に準備できる
前売券はオンラインで購入できるため、開幕前にチケットを準備しておけます。ゴッホ《星月夜》やミレー《落穂拾い》など注目作が多い展覧会なので、行く日が決まっている方は事前に確認しておくと安心です。
アソビュー!で前売券を購入できる
前売券はアソビュー!からオンラインで購入できます。スマートフォンで利用できる電子チケットなので、開幕前に準備しておけます。
※前売券の販売状況や利用条件は変更される場合があります。購入前にチケットページで最新情報をご確認ください。
ゴッホ好きなら見逃したくない展覧会
今回のオルセー展は、かなり期待しています。もちろん約110点という規模も魅力ですが、何より作品の質がすごい。ミレー《落穂拾い》、ゴッホ《星月夜》、ゴーガン《アレアレア》、カイユボット《床削り》。
美術史の本の中で何度も目にする作品が、一度に東京へやってきます。特にゴッホ《星月夜》とミレー《落穂拾い》は、日本で頻繁に見られる作品ではありません。「いつかオルセー美術館に行ってみたい」と思っている人にとっても、パリへ行かずにそのコレクションの一端を体験できる貴重な機会です。
パリまで行かなくても、日本でゴッホが見られる美術館12選で国内で見られる名画をたどれます。
展覧会の前後に、作品集でもう少し見る
会場で見た1点を、画家の生涯やほかの作品の中に置き直してみると、作品の印象がまた変わります。展覧会の予習や、見終わったあとの余韻をたどるために、作品集を一冊手元に置いておくのもおすすめです。
ARTZUKANの読者にも実際に選ばれているのが、『クロード・モネ 旅のための作品集』(岩崎余帆子)、『モネ作品集』(安井裕雄)、『ゴッホ作品集』(冨田章)の3冊。会場で気になった作品から、その画家の世界をもう少し深く見ていくのに向いています。
クロード・モネ 旅のための作品集 [ 岩崎余帆子 ]
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図説 モネ「睡蓮」の世界
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まとめ|オルセー美術館の名作約110点が東京へ
東京都美術館開館100周年記念「オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び」は、2026年11月14日(土)〜2027年3月28日(日)に東京都美術館で開催されます。
主な出品作品は、ゴッホ《星月夜》、ミレー《落穂拾い》、ゴーガン《アレアレア》、カイユボット《床削り》、ルノワール《浴女たち》、シニャック《アヴィニョン、夕暮れ(教皇宮殿)》など。約110点が展示されます。
現在は一般前売券2,200円を販売中です。ゴッホ《星月夜》は16年ぶり、ミレー《落穂拾い》は23年ぶりの来日です。
2026年秋から2027年春にかけて、上野で見ておきたい展覧会のひとつです。

