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UESHIMA MUSEUM(植島美術館)に行ってきた|リヒター・草間彌生・村上隆も。見どころ・作品・子連れで訪れた感想

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UESHIMA MUSEUM(植島美術館)のメインイメージ

この記事では、UESHIMA MUSEUM(植島美術館)で実際に見られる作品や見どころを、現地で撮影した写真とともに紹介します。結論から言うと、想像していた以上に充実した美術館でした。現代美術が好きな人はもちろん、リヒターや草間彌生など気になる作家がいるなら、ぜひ一度体験してほしい場所です。

先日、家族で渋谷にあるUESHIMA MUSEUMを訪れました。実際に館内を歩いてみて感じたのは、渋谷という街と、最先端の現代美術という組み合わせが妙にマッチしていることでした。

ゲルハルト・リヒター、草間彌生、村上隆、アンディ・ウォーホル、名和晃平、奈良美智など、国内外の現代美術を一度に見ることができます。名前だけ並べてもかなり豪華ですが、実際に歩いてみると、この美術館の魅力は「有名作家がそろっている」ということだけではありませんでした。

巨大な絵画、動物の姿をした立体、蛍光灯や鏡を使った作品、暗い空間の中で光そのものと向き合う作品まで、フロアを移動するたびに見える景色が変わっていきます。僕自身、事前に名前を知っていた作家だけでなく、その場で初めて出会った作品にも何度も足を止めました。

この記事では、注目作家と作品だけでなく、館内を歩いて感じた面白さ、館長・植島幹九郎さんがコレクションに込めた考え、子連れでの感想、所要時間・料金・アクセス・チケット情報までまとめています。

目次

UESHIMA MUSEUM(植島美術館)とは?渋谷で850点超の現代美術コレクションに出会う

UESHIMA MUSEUM(植島美術館)|渋谷の現代美術館
加藤泉《Untitled》2024年|UESHIMA MUSEUM 正面玄関横

UESHIMA MUSEUMは、2024年6月1日に開館した現代美術館です。場所は渋谷教育学園の敷地内。建物は、以前ブリティッシュ・スクール・イン・東京が使っていた校舎をリノベーションしたもので、地下1階から5階までが現代アートの展示空間になっています。

展示の核となるのは、事業家・投資家の植島幹九郎さんによる現代美術コレクション「UESHIMA MUSEUM COLLECTION」です。2022年2月に設立され、本格的な収集活動を開始しました。現在は850点を超える作品を所蔵し、その中からテーマに沿って作品が選ばれています。

僕が訪れた2026年9月には、第3回コレクション展「像は燃え、像は歪み、そして光に昇華する」が開催されていました。本展のキュレーションは長谷川祐子さんです。B1から5Fまでを巡りながら、絵画や彫刻だけでなく、写真、映像、光、インスタレーションへと表現が広がっていく構成です。

いわゆる「名画が壁に並ぶ美術館」とはかなり違います。階段や廊下を進み、部屋が変わるたびに作品との距離感も変わっていく。建物そのものを探索するように歩きながら、次にどんな作品と出会うのか分からない偶然性まで含めて現代美術を体験できるのが、この美術館の面白さだと感じました。

リヒター、草間彌生、村上隆も|UESHIMA MUSEUMで見られた注目作家

まずは、今回の展示で見ることができた主要な作家から紹介します。

ゲルハルト・リヒター|一人の作家とは思えないほど表現が広い

最初に見ておきたいのが、ドイツを代表する現代美術家ゲルハルト・リヒターです。

ゲルハルト・リヒター《Abstraktes Bild (P1)》1990/2014年|UESHIMA MUSEUM
《Abstraktes Bild (P1)》1990/2014年
ゲルハルト・リヒター《Abstrakte Skizze (Abstract Sketch)》1991年|UESHIMA MUSEUM
《Abstrakte Skizze (Abstract Sketch)》1991年
ゲルハルト・リヒター展示風景|UESHIMA MUSEUM
ゲルハルト・リヒター 展示風景|UESHIMA MUSEUM(2026年9月撮影)
ゲルハルト・リヒター《Cage 1 (P19-1)》2006/2020年|UESHIMA MUSEUM
《Cage 1 (P19-1)》2006/2020年
ゲルハルト・リヒター《STRIP》2025年|UESHIMA MUSEUM
《STRIP》2025年

UESHIMA MUSEUMにはリヒターの作品が複数あり、僕が訪れたときには《Abstrakte Skizze (Abstract Sketch)》1991年、《Abstraktes Bild (P1)》1990/2014年、《Cage 1 (P19-1)》2006/2020年、《STRIP》2025年などを見ることができました。

リヒターは写真をもとにした絵画、抽象画、グレーの絵、色見本のような作品、ストライプなど、ひとつの様式に収まりません。作品を何点か続けて見ると、同じ作家が作ったとは思えないほど表情が違います。それでも「絵画とは何を映し出せるのか」という問いが、どこかでつながっているように感じます。

今回見られた4点のうち、《Abstrakte Skizze (Abstract Sketch)》1991年は油彩による絵画です。一方、《Abstraktes Bild (P1)》《Cage 1 (P19-1)》《STRIP》は、もとの絵画やイメージを写真・プリント・デジタル処理へ展開した作品です。ただ、リヒターにとってプリントは単なる「複製」ではありません。描いた絵を別の媒体へ移し替え、切り取り、拡大し、再構成することで、「同じイメージは、どこまで別の作品になり得るのか」を考え続けてきました。

日本でリヒターの作品をこれだけ続けて見られる機会は貴重です。国内では東京都現代美術館、豊田市美術館、国立国際美術館、金沢21世紀美術館などもリヒター作品を所蔵していますが、コレクション作品は常に展示されているとは限りません。UESHIMA MUSEUMでは複数のリヒター作品が展示されており、異なる年代や表現を見比べられること自体が大きな見どころです。

そして、リヒターはこの美術館を考えるうえでも重要な作家です。後で触れますが、館長の植島幹九郎さんが現代美術へ深く傾倒していくきっかけの一つにも、リヒターとの出会いがありました。

草間彌生|赤と青の反復が画面いっぱいに広がる2021年作品

草間彌生の2021年作品|UESHIMA MUSEUM
草間彌生 2021年作品|UESHIMA MUSEUM(2026年9月撮影)

草間彌生の作品も展示されていました。2021年制作の作品で、正式タイトルは《今こそわが芸術のおとづれをまっているワタシ ハナバナしいわが心のナグサメのおとづれをまっている いつ年月をえてしらぬまにわたしは 今日のわたしはさみしかったので空の白いクモみつめたのだ》

タイトルだけでも一つの文章のようですが、画面を覆う反復のリズムも強烈です。草間作品というと水玉のイメージが先に浮かびますが、網目のような反復も彼女の重要な表現です。写真で見るより、実物では筆の動きと反復の密度がよく分かりました。

じっと見ていると、同じように繰り返されているはずの網目が、少しずつ動いたり、別の形に変わったりするようにも見えてきます。画面が静止しているのに、見る側の目の中で像が揺れ始めるような感覚があり、反復そのものに引き込まれていく感じがしました。

訪れる少し前、草間彌生が97歳で亡くなったというニュースがありました。UESHIMA MUSEUMも公式サイトで追悼の言葉を発表しています。晩年まで描き続けた2021年の作品を前にすると、網目の反復が「最後まで手を止めなかった時間」の積み重ねのようにも見えました。

草間彌生については、ARTZUKANの「草間彌生とは?何がすごい?」でも生涯や代表作を詳しく紹介しています。

村上隆 × VIRGIL ABLOH|現代アートとファッションが交差する

村上隆 × VIRGIL ABLOH《Bernini DOB: Carmine Pink and Black》2018年|UESHIMA MUSEUM
村上隆 × VIRGIL ABLOH《Bernini DOB: Carmine Pink and Black》2018年|UESHIMA MUSEUM

村上隆とヴァージル・アブローによる《Bernini DOB: Carmine Pink and Black》2018年も展示されていました。

村上隆の「DOB」を思わせるキャラクター表現と、ファッションやストリートカルチャーの世界でも大きな影響を持ったヴァージル・アブローが交差する作品です。UESHIMA MUSEUMでは、美術館の中だけで完結する「美術」ではなく、ファッションやデザイン、デジタル文化とつながる表現も自然に並んでいました。

こうした作品まで同じ館内で見られることが、コレクションの幅をよく表していると思います。

アンディ・ウォーホル《Jane Fonda》1982年

アンディ・ウォーホル《Jane Fonda (F. & S. II. 268)》1982年|UESHIMA MUSEUM
アンディ・ウォーホル《Jane Fonda (F. & S. II. 268)》1982年|UESHIMA MUSEUM

ポップアートを代表するアンディ・ウォーホルの《Jane Fonda (F. & S. II. 268)》1982年もありました。

ウォーホルは、キャンベル・スープ缶やコカ・コーラのような大量生産品、マリリン・モンローやジェーン・フォンダのような著名人のイメージを、シルクスクリーンで反復して作品にしたポップアートの代表的な作家です。

そこには、有名人の顔さえも、広告や商品と同じように大量に複製され、消費されていく時代が映し出されています。社会を単純に批判したというより、その華やかさも含めて、当時の大衆文化そのものをアートにしたのがウォーホルでした。

今回の展示を歩いていると、リヒターのように「写真と絵画」の関係を問い続けた作家と、ウォーホルのように「複製されるイメージ」を作品にした作家が、別々の方向から現代の視覚文化につながっていることも見えてきます。

名和晃平《PixCell – Deer 40》2015年|ガラスの粒で鹿が別の存在に変わる

名和晃平《PixCell - Deer 40》2015年|UESHIMA MUSEUM
《PixCell – Deer 40》2015年
名和晃平《PixCell - Deer 40》2015年|UESHIMA MUSEUM
《PixCell – Deer 40》2015年

写真でもかなり目を引きますが、実物で見て面白かったのが名和晃平《PixCell – Deer 40》2015年です。

剥製の鹿を無数のガラスビーズで覆う「PixCell」シリーズ。透明な球体を通して見ると、鹿の表面が拡大されたり歪んだりし、ひとつの身体が細かな視覚情報へ分解されていくように見えます。「Pixel」と「Cell」を組み合わせたシリーズ名そのものが、デジタル画像と生命の細胞を同時に連想させます。

遠くから見ると神秘的な動物ですが、近づくと一つ一つの球体に周囲の光や自分の姿まで映り込みます。写真以上に「見る側も作品の中に巻き込まれる」感覚がありました。

名和晃平では、大きな鹿だけでなく、《PixCell – Mandarin Duck》2018年、《PixCell [Mandarin Duck]》2003年、《Frog 3》2025年といった小さな作品も見ることができました。

名和晃平《PixCell [Mandarin Duck]》2003年|UESHIMA MUSEUM
《PixCell [Mandarin Duck]》2003年
名和晃平《PixCell – Mandarin Duck》2018年|UESHIMA MUSEUM
《PixCell – Mandarin Duck》2018年
名和晃平《Frog 3》2025年|UESHIMA MUSEUM
《Frog 3》2025年

同じ「動物」を題材にしていても、ガラス球で表面を覆う作品と、透明素材越しに像そのものを変化させる作品では見え方が違います。大きな鹿を見たあとに小さな鳥やカエルを見ると、名和が「生き物を彫刻する」というより、僕たちが対象をどう認識しているのかを揺さぶっていることが見えてきます。

僕自身、実物を見ていて現実とデジタル、生き物と人工物、その境界線まで少しずつ曖昧になっていくような感覚を受けました。鹿や鳥そのものを見ているはずなのに、無数の球体を通すことで、それが「物」なのか「画像」なのか、自然なのか人工的につくられた像なのかが分からなくなっていく。《PixCell》の面白さは、その境界が揺らぐ感覚を実物の彫刻として体験できるところにもあると思います。

奈良美智《Hey! Ho! Let’s Go!》2011年

奈良美智《Hey! Ho! Let’s Go!》2011年|UESHIMA MUSEUM
奈良美智《Hey! Ho! Let’s Go!》2011年|UESHIMA MUSEUM

奈良美智《Hey! Ho! Let’s Go!》2011年は、2026年8月から常設展示が始まった作品です。

見つかった看板材の上に描かれた2枚組で、奈良作品らしい少し挑発的な目つきの人物が、スタンドマイクの前で歌うような姿で向かい合っています。きれいなカンヴァスではなく、木材の継ぎ目や表面の痕跡がそのまま残っているのも印象的です。

奈良美智が描く子どもたちは、単に「かわいい」だけの存在ではありません。少し睨むような目や、こちらに媚びない表情には、ひとりで立とうとする意志や、周囲に簡単には従わない反抗心も感じられます。孤独さや脆さと、内側にある強さが同時に見えるところが、奈良作品の魅力だと思います。

《Hey! Ho! Let’s Go!》というタイトルからは、奈良が影響を受けてきたパンク・ロックの勢いも重なって見えます。かわいらしい姿なのに、どこか「自分の感情を押し殺さず、自分のリズムで進んでいく」ような強さがある。僕には、この作品の人物がそんなふうにも見えました。

有名作家だけではない。館内を歩いていると「これは何だろう」で足が止まる

有名な名前を目当てに訪れても十分楽しめますが、僕がUESHIMA MUSEUMで面白いと思ったのは、知っている作家だけを確認して終わる鑑賞にならなかったことです。

作品名も作家名も知らないまま、「これは何だろう」と近づいてみる。横から見る。素材を確認する。隣のQRコードを読み込んで、そこで初めて作家や作品の背景を知る。そういう見方が自然にできました。



今回、館内に入って最初に出会ったのが、すやすやと眠っている猫の作品でした。よく見ると、お腹がゆっくり上下していて、本当に呼吸しているように見えます。息子も「これ、本当に生きてるの?」と何度か聞いてきたくらいリアル。まさか美術館に入って最初に猫に出会うとは思いませんでした。猫好きにはたまりません。

UESHIMA MUSEUMで展示されていた眠る猫の作品
ライアン・ガンダー|館内で最初に出会った、眠る猫の作品|UESHIMA MUSEUM(2026年9月撮影)

そのあとも大型作品や、素材だけではどう作られているのかすぐには分からない作品が次々に現れます。現代美術は「意味が分からない」と感じることもありますが、ここでは分からないこと自体が次の作品を見る動機になるように感じました。

そして館内を巡った最後には、今度はしゃべるカエルにも出会えました。(子供が作品を発見!)
最初に眠る猫、最後にしゃべるカエル。こういう予想外の出会いがあるのも、UESHIMA MUSEUMを歩く楽しさの一つでした。

ライアン・ガンダー|館内の最後に出会った、しゃべるカエル|UESHIMA MUSEUM(2026年9月撮影)

すべてを理解しようとせず、まず「好き」「気になる」「妙に怖い」「触感が気になる」くらいから見る。そのあとで作品横のQRコードから公式解説を読むと、最初の印象が少し変わる。この順番がかなり楽しかったです。

絵を見るだけじゃない|光と空間そのものを体験する作品

UESHIMA MUSEUMの印象を強くしていたのが、光や空間を使った作品です。壁に掛かった絵を正面から見るだけではなく、暗い部屋に入ったり、光が壁や自分の身体に反射したりする作品が続きます。

ジェームズ・タレル《Boris》2002年

ジェームズ・タレル《Boris》2002年|UESHIMA MUSEUM
ジェームズ・タレル《Boris》2002年|UESHIMA MUSEUM(2026年9月撮影)

暗い部屋の中に、白く光る四角形が浮かんで見えるジェームズ・タレル《Boris》2002年

一見すると古いブラウン管テレビの画面のようにも見えますが、近づくほど「いま何を見ているのか」が曖昧になります。タレルは光そのものを素材として、人間が光や空間をどう知覚するのかを作品にしてきた作家です。写真にすると白い面に見えてしまう部分も、実際の暗さの中ではかなり違う感覚があります。

オラファー・エリアソン《Eye see you》2006年/《Holo Lamp》2005年

オラファー・エリアソン作品|UESHIMA MUSEUM
オラファー・エリアソン《Eye see you》2006年|UESHIMA MUSEUM(2026年9月撮影)

オラファー・エリアソンの作品では、光を見るというより、光によって空間の見え方そのものが変わっていきます。《Eye see you》では単一周波数の光によって、周囲の物や人が本来持っている色を認識しにくくなります。《Holo Lamp》では、円形のガラス面に虹のような色が現れます。

《Eye see you》の中に入ったとき、僕には昔の白黒映画の中に入り込んだような感覚がありました。自分の顔や皮膚まで色を失ったように見えて、普段知っている自分の身体なのに、どこか別のものに見えてきます。

日常生活では、自分の周囲から色がここまで奪われた状態を体験することはほとんどありません。だからこそ、「いつもの見え方」が通用しない状況へ強制的に連れていかれるような感覚がありました。角度や立ち位置によって見え方が変わる《Holo Lamp》も含めて、こうした作品は写真を見るだけでは分からない、実物ならではの体験だと思います。

ダン・フレイヴィン《untitled (for Ad Reinhardt) 1b》1990年

ダン・フレイヴィン《untitled (for Ad Reinhardt) 1b》1990年|UESHIMA MUSEUM
ダン・フレイヴィン《untitled (for Ad Reinhardt) 1b》1990年|UESHIMA MUSEUM(2026年9月撮影)

ダン・フレイヴィンは、市販の蛍光灯を美術作品へと変えたことで知られる作家です。《untitled (for Ad Reinhardt) 1b》1990年では、青・黄・ピンク・赤・緑の蛍光灯が組み合わされ、器具そのものだけでなく、壁や天井に広がる色まで作品の一部になります。

「蛍光灯を置いただけ」と言えばそれまでなのに、その場所へ立つと周囲の白い壁まで違う色に見えてきます。フレイヴィンが見せようとしたのは、蛍光灯という物そのものより、光によって空間の見え方そのものが変わる瞬間なのだと思います。

市販の蛍光灯しか置かれていないのに、光が壁や床、天井へ広がると、いつもの白い空間がまったく別の場所に変わって見えます。そうなると、どこまでが「作品」で、どこからが「展示空間」なのかも分からなくなってくる。名和晃平の作品で物体の境界が揺らいだのに対して、フレイヴィンでは作品と空間の境界が曖昧になるように感じました。

teamLab(チームラボ)《Matter is Void – Fire》2022年

teamLab《Matter is Void - Fire》2022年|UESHIMA MUSEUM
teamLab《Matter is Void – Fire》2022年|UESHIMA MUSEUM(2026年9月撮影)

teamLab(チームラボ)《Matter is Void – Fire》2022年は、物質として固定された絵画や彫刻とはまったく違う、デジタルの「像」を扱う作品です。

暗い画面の中で像が生まれ、変化していく様子を見ていると、今回の展覧会タイトルにある「像は燃え、像は歪み、そして光に昇華する」という言葉が少し実感として分かってきます。上の階へ進むほど、作品が物体から光やデータへほどけていくような流れがありました。

地下から5Fまで、展示全体がひとつの物語になっている

この感覚は、僕の印象だけではありませんでした。第3回コレクション展「像は燃え、像は歪み、そして光に昇華する」は、地下から上の階へ移動していく身体の動きそのものを、「見る」という行為が変化していく物語として構成しています。

B1は「消滅と風景」、1Fは「都市と痕跡」、2Fは「反復と像」、3Fは「肖像と隠蔽」、4Fは「断片と都市」、そして5Fは「光と影―像を手放す場所へ」。地下の風景から始まり、都市、反復、肖像、断片を経て、最後には光や抽象へと進んでいきます。

そう考えると、館内を上っていくにつれて、作品の輪郭や物質感が少しずつほどけていったように感じた理由も腑に落ちました。作品を一つずつ見るだけでなく、美術館を上っていく体験そのものが一つの展示になっている。UESHIMA MUSEUMを歩いていて感じた独特の流れは、最初から展示全体の中に組み込まれていたのだと思います。

なぜ、こんなに幅広い作品が集まっている?館長・植島幹九郎の「同時代性」

ここまで館内を歩いて、一つ疑問が出てきました。リヒターや草間彌生、ウォーホルのように美術史上すでに大きな評価を得ている作家がいる一方で、僕が名前を知らなかった作家や若い作家まで並んでいます。なぜ、これほど幅が広いのでしょうか。

その答えの一つが、館長・植島幹九郎さんがコレクションの軸にしている「同時代性」です。

UESHIMA MUSEUM COLLECTIONは2022年2月に本格的な収集を開始しました。公式には、国際的に活躍する有名作家だけでなく、キャリアを始めたばかりの作家や、まだ十分な評価を受けていない作家も対象にすると明記されています。完成した「美術史」を後から集めるのではなく、いま同じ時代を生きている作家が何を見て、何を表現しているのかを追っていくコレクションです。

植島さんが現代美術に関心を深めるきっかけには、ゲルハルト・リヒターも関わっています。東日本大震災後の人道支援活動を通じて、リヒターと社会が交差するプロジェクトを知り、その後ニューヨークでリヒター展を見て大きな衝撃を受けたことが公式プロフィールで紹介されています。

だからこそ、UESHIMA MUSEUMでは「価値の定まった有名作品だけを見せる」感じが薄いのかもしれません。作品を倉庫に眠らせるのではなく、社会と関わりながら動き続けるコレクションにしたいという考えも掲げられています。

今津景《The Sea is Barely Wrinkled》2025年|UESHIMA MUSEUM
今津景《The Sea is Barely Wrinkled》2025年
ラキブ・ショー《The Pragmatic Pessimist》2024年|UESHIMA MUSEUM
ラキブ・ショー《The Pragmatic Pessimist》2024年

作品だけではない|渋谷の街と美術館の境界も曖昧になる

考えてみると、この「境界が曖昧になる」感覚は、作品だけでなくUESHIMA MUSEUMそのものにもあるように思います。巨大な美術館に入って日常から切り離されるというより、どこか街なかのギャラリーを巡っているような距離感があり、渋谷の街と美術館が地続きになっているように感じました。

再開発によって景色が次々と変わり、新しい建物や文化、人が混ざり続ける渋谷。海外からの観光客も多く、歩いていると一瞬、日本ではない街にいるような感覚になることさえあります。その街の変化と、いま同じ時代を生きる作家を追い続けるUESHIMA MUSEUM COLLECTIONの「同時代性」は、どこか重なって見えます。完成された秩序の中で作品を見るというより、街も美術館もまだ変化の途中にある。だからこそ、館内で感じた混沌や、作品と空間の境界がほどけていく感覚が、渋谷という場所では妙にリアルにつながりました。

名和晃平では「物と像」、フレイヴィンでは「作品と空間」、そしてUESHIMA MUSEUMでは「街と展示空間」。それぞれ違うかたちで境界が揺らいでいきます。美術館を出てキャットストリートを歩いていると、看板や建物、店先の色までさっきまで見ていた作品の続きのように感じられました。

帰り道のキャットストリートまでアートに見えてくるくらい、ものを見る感覚を揺さぶられた。それが今回、UESHIMA MUSEUMを訪れていちばん面白かったことかもしれません。

その他の展示作品をPick Up

ジュリアン・オピー《Lucia, back 3》2017年|UESHIMA MUSEUM
ジュリアン・オピー《Lucia, back 3》2017年
篠原有司男《Mortorcycle》1993年|UESHIMA MUSEUM
篠原有司男《Motorcycle》1993年
樫木知子《AZALEA》2024年|UESHIMA MUSEUM
樫木知子《AZALEA》2024年
森本啓太《Soliloquy》2022年|UESHIMA MUSEUM
森本啓太《Soliloquy》2022年

子どもと一緒でも楽しめる?家族で行って感じたこと

今回は家族で訪れました。現代美術というと「難しそう」「子どもには退屈かも」と思う人もいるかもしれませんが、UESHIMA MUSEUMは絵画だけではありません。

ピカチュウの姿を使ったダニエル・アーシャムの作品、キノコランプや鹿やカエルなどの立体、光で部屋全体の色が変わる作品、ドクロ、映像作品など、まず見た目から入れるものがかなりあります。

作品の意味を最初から理解しなくても、「これ何?」「どうやって作ったんだろう?」というところから見られるのは、子どもと一緒の鑑賞にも相性がいいと感じました。

公式案内では小学生以下の美術館鑑賞は無料です。館内では子どもから目を離さないよう案内されていますので、立体作品の近くなどでは特に気をつけながら見るのがよさそうです。(作品との距離が近いのでハラハラする場面もありました。)

ダニエル・アーシャム《BLUE CRYSTALIZED PIKACHU》2020年|UESHIMA MUSEUM
ダニエル・アーシャム《BLUE CRYSTALIZED PIKACHU》2020年
ミカ・ロッテンバーグ《Lampshare (bx 1.4)》2025年|UESHIMA MUSEUM
ミカ・ロッテンバーグ《Lampshare (bx 1.4)》2025年
平子雄一《Wooden Wood 12》2022年|UESHIMA MUSEUM
平子雄一《Wooden Wood 12》2022年

UESHIMA MUSEUMは写真撮影できる?

館内は、一部の作品を除いて写真撮影とSNS投稿が可能です。作品ごとに表示がありますので、現地の案内を確認してください。フラッシュ、三脚、自撮り棒は使用できません。

撮影できる作品が多いうえ、QRコードの解説やWEBチケットの表示でもスマホを使います。写真をたくさん撮りたい人は、スマホの充電を忘れずに。

この記事に掲載している館内写真は、僕が訪問時に撮影したものです。個人ブログへの写真掲載については、事前にUESHIMA MUSEUMへ確認したうえで紹介しています。

UESHIMA MUSEUMの館内案内|写真撮影ルール
UESHIMA MUSEUMの館内案内|写真撮影ルール

所要時間・料金・アクセス・チケット

僕の場合は作品を撮影したり、QRコードの解説を読んだりしながら見たので、さっと一周するより時間を使いました。公式のチケットは日時指定制です。作品をしっかり見るなら、少なくとも1時間半、できれば2〜2時間半ほど余裕を見ておくと安心だと思います。

美術館名UESHIMA MUSEUM(ウエシマミュージアム/植島美術館)
住所東京都渋谷区渋谷1-21-18 渋谷教育学園 植島タワー
開館時間通常 11:00〜17:00(最終入場16:00)
休館日月曜日(月曜が祝日の場合は開館し、翌平日休館)
料金一般 1,800円/中高生 500円/小学生以下 無料(日本国内在住者・税込)
アクセスJR渋谷駅 宮益坂口から徒歩約10分
チケット日時指定WEBチケット制。当日WEB予約も可能

渋谷駅から徒歩約10分|僕はMIYASHITA PARKを通って向かいました

UESHIMA MUSEUMは渋谷駅から徒歩約10分です。僕は渋谷駅から、再開発で大きく変わったMIYASHITA PARK(宮下公園)のあたりを通りながら向かいました。渋谷の新しい街並みを見ながら歩いていくと、そのまま現代美術館へ入っていく流れにもつながっていて、このルートはなかなかよかったです。

入館時にはWEBチケットのQRコードを使います。公式サイトでは、あらかじめQRコードのスクリーンショットを保存しておくとスムーズと案内されています。

また、6Fでは茶陶・現代陶芸の展示と、自分で抹茶を点てる体験を組み合わせた「時のうつほ」も開催されています。現代アート展と抹茶体験のセットは一般3,500円です。B1〜5Fの現代アートだけを見たい場合は通常の鑑賞チケットで大丈夫です。

UESHIMA MUSEUMのよくある質問

所要時間はどれくらい?

さっと見る場合でも1時間半ほどは見ておきたいです。作品をじっくり見たり、写真を撮ったりしながら巡るなら、2〜2時間半ほどあると余裕をもって楽しめます。

館内で写真撮影はできますか?

一部作品を除いて撮影・SNS投稿が可能です。撮影不可の作品は個別の表示を確認してください。フラッシュ、三脚、自撮り棒は使用できません。

子どもと一緒に入れますか?

入館できます。小学生以下の美術館鑑賞は無料です。館内では子どもから目を離さないよう公式から案内されています。(作品との距離が近いので目を離さないようにした方がいいです)

予約なしでも入れますか?

日時指定WEBチケット制です。当日もWEB予約できますが、行く日時が決まっている場合は事前に予約しておくと安心です。

まとめ|有名作家を見に行って、知らない作品に出会う美術館

UESHIMA MUSEUMには、ゲルハルト・リヒター、草間彌生、村上隆、アンディ・ウォーホル、名和晃平、奈良美智など、名前を知っている作家の作品が数多くあります。それだけでも、渋谷で立ち寄る理由として十分です。

知らない作家の前で足が止まり、光の部屋に入って見え方が変わり、鹿やカエルの表面を近くでのぞき込む。有名作家を見に行って、知らない作品に出会う。それがUESHIMA MUSEUMの魅力だと思います。

そして、その雑多にも見える幅の広さの奥には、植島幹九郎さんが掲げる「同時代性」という考えがあります。いま評価されているものだけでなく、いま生まれつつある表現も一緒に見る。その姿勢が、渋谷という常に変化している街とも妙に合っていました。

また訪れたい美術館です。
気づけば、すっかりUESHIMA MUSEUMのファンになっていました。

ほかの展覧会も見る → 東京の美術展・展覧会まとめ

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