エットレ・ソットサス展を見てきた|予備知識ほぼゼロでも面白かったアーティゾン美術館【2026】

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SOTTSASSの文字と白黒ストライプ、黄色・赤・青の平面図形で構成した抽象バナー

2026年9月、アーティゾン美術館で開催中の「エットレ・ソットサス —魔法がはじまるとき、デザインは生まれる」を見てきました。この記事では、ソットサスをほとんど知らない状態で実際に展覧会を見た僕の目線から、印象に残ったポイントを紹介します。後半では、同じ日に見た石橋財団のコレクション展示についても触れます。

正直にいうと、見に行く前の僕はソットサスのことをほとんど知りませんでした。

代表作とされる《カールトン》の名前も知らない。メンフィスというデザイナー集団についても、詳しく知っていたわけではありません。

気になったきっかけは展覧会のビジュアルでした。黄色い輪っかが何段も重なり、その間に白と黒のストライプが入った、柱のようなもの。プラつチックなのか陶器なのか、不思議でポップな存在感NI興味が湧いていました。

デザインとしては面白い。でも、これは何なんだろう。何のためのものなんだろう。そんな状態で会場に入りました。

ところが展示を見ていくと、家具だけではありません。陶器、タイプライター、写真、ドローイング、ガラスの花瓶のようなもの……と、次々に違うものが出てきます。

特に印象に残ったのは、1970〜80年代の作品なのに、今見てもまったく古く感じなかったことです。白黒のストライプや、黄・赤・青といった強い色、単純な幾何学形の組み合わせは、むしろ今のグラフィックやインテリアに置いても成立しそうなくらい新鮮で都会的に見えました。

見終わったときに残ったのは、「ソットサスは何を作った人なのか」というより、「デザインを通して表現を考えていたアーティストだった」という印象でした。

目次

エットレ・ソットサス展とは?

「エットレ・ソットサス —魔法がはじまるとき、デザインは生まれる」は、アーティゾン美術館で2026年6月23日から10月4日まで開催されている展覧会です。

ソットサス(1917–2007)は、20世紀イタリアを代表するデザイナーのひとり。1950年代にはオリベッティなどの企業と仕事をし、1981年には国際的なデザイナー集団「メンフィス」の結成に中心人物として関わりました。

今回の展覧会は、ソットサスの初期から晩年までを100点を超える作品でたどる大規模な回顧展です。展示は大きく5つの時代に分かれています。

  • 1950年代後半:イタリア企業との協働
  • 1960年代:デザインの実験
  • 1970年代:デザインを巡る放浪
  • 1980年代:メンフィスの時代
  • 1990年代以降:飽くなきデザインの冒険

年代順に進むので、僕のように予備知識がほとんどなくても、「この人はこう変わっていったのか」と追いかけやすい構成でした。

まず気になっていた、黄色い輪っかの「柱」は何だったのか

会場へ行く前から気になっていたのが、黄色い輪と白黒のストライプが重なった柱状の作品です。

僕は最初、陶器でできたポールのようなものに見えていました。家具なのか、彫刻なのか、何かの道具なのかも分からない。

実物は想像以上に大きく、黄色い輪と白黒のストライプが重なるその立体は、2メートルを超える高さがあります。しかも一本だけではありません。会場には、トーテムのような大型のセラミック作品が何本も並び、塔が林立しているような迫力がありました。

出品目録を見ると、この一角には高さ2メートルを超える大型作品だけでも4点あり、《トーテム No.1》《トーテム No.2》はともに高さ280cm、《アーグラ》は202cm、《オダリスク》は215cm。写真で見る以上にスケールが大きく、何本もの立体に囲まれることで、色や形だけでなく空間そのものが変わって見える展示でした。

ポスターで気になっていた黄色と白黒ストライプの作品は《オダリスク》。1964〜66年にデザインされた大型のセラミック作品で、出品目録では高さ215cmとされています。同じ一角には《トーテム No.1》《トーテム No.2》《アーグラ》も並び、複数の塔のような作品に囲まれる展示になっていました。

実用品として「何かをするための道具」というより、機能から離れ、色や形そのものが人に働きかけるような立体作品として見ると分かりやすいと思います。

そこが、僕がこの展覧会で最初に面白いと思ったところでした。

「デザイン」と聞くと、椅子や机、家電のように用途が先にあるものを想像します。でもソットサスの作品を見ていると、そもそもデザインは役に立たないといけないのか?というところまで戻される感じがします。

会場を進むほど「何をデザインする人?」と分からなくなる

展示の面白さは、ソットサスを一つのジャンルに入れようとすると、すぐにそこからはみ出してくるところでした。

家具を見ていると思ったら、オリベッティのタイプライター《ヴァレンタイン》が出てくる。巨大なセラミック作品の横には、それを考えるためのドローイングが並ぶ。1970年代に入ると、今度は旅先で撮影した写真作品「メタファー」シリーズが続きます。

完成したプロダクトだけを並べた「名作デザイン展」という感じではありません。

考えて、描いて、旅をして、写真を撮り、家具を作り、ガラスを作る。その全部がソットサスのデザインにつながっているように見えてきます。

ドローイングを見ると、あの不思議な形が突然生まれたわけではないと分かる

個人的に興味を引かれたのが、立体作品と一緒に展示されていたドローイングです。トーテムのためのドローイングには、丸、四角、棒のような形が積み重なっています。

実物だけを見ると「ずいぶん変わった形だな」と思うのですが、スケッチを続けて見ると、色や形の組み合わせを何度も試していることが分かります。奇抜に見えるものにも、その前にはかなり長い思考の過程がある。

デザインを仕事にしてきた僕には、この部分もかなり印象に残りました。

1970年代になると、今度は写真。「メタファー」シリーズが面白い

1970年代の展示では、家具や陶器とは雰囲気が変わり、「メタファー」と呼ばれる写真作品が多数並びます。

作品タイトルも独特です。「とても美しい建築のデザイン。だから何?」、「旅行する鳥のための美しいホテルのデザイン」、「ヤスデのための空港のデザイン」、「ミミズのための記念碑のデザイン」など。

タイトルを読んでいると、建築やデザインを真面目に考えているのに、どこか冗談のようでもあります。ここまで来ると、ソットサスが「きれいな家具を作る人」ではなかったことがかなり分かってきます。

そして1980年代、《カールトン》をここで初めて知った

1980年代の「メンフィスの時代」に入ると、展示の雰囲気が一気に変わります。黒い板が斜めに走り、赤や青などの色がぶつかるように組み合わされた大きな作品が現れました。

その背景にあるのが、1981年にソットサスが若いデザイナーたちと立ち上げたデザイン集団「メンフィス」です。ソットサスは単なる参加メンバーではなく、その中心となって結成を主導した人物でした。

そして、そのメンフィスを象徴する作品の一つが《カールトン》です。1981年にデザイン・製作され、高さ約196cm、幅約190cmあります。

僕はこの作品を展覧会へ行くまで知りませんでした。実物を見て最初に浮かんだのは、「これは棚なのか。本棚なのか。それともオブジェなのか?」という疑問です。

実際、収納家具として使うことはできます。でも目の前にすると、家具というより一つの建築や彫刻に近い存在感があります。会場では照明によって壁に大きな影が落ち、作品本体だけでなく、その周囲の空間まで含めて見たくなる展示になっていました。

最後に待っていたガラス作品がかなり良かった

さらに印象が変わったのがガラス作品です。1980年代には《アルコル》《アルデバラン》《アリオト》《アルタイル》《デネブ》《ミザール》《シリウス》など、多数のガラス作品が制作されています。

晩年の2006年にも、18点におよぶ「花瓶」シリーズが並びます。透明なガラスに、青、黄、赤、緑。そこへ別のガラス片やワイヤーが組み合わされている。家具とは素材も用途も違うのに、色と形を組み合わせる楽しさは、それまで見てきたソットサスの作品とつながって見えました。

ソットサス展だけ見て帰るのはもったいない。コレクション展示も良かった

今回、もう一つ書いておきたいのがアーティゾン美術館のコレクション展示です。ソットサス展を見ることが目的でしたが、5階の「石橋財団コレクション選」もかなり良かったです。

展示されていたのは、ピサロ、モリゾ、ルノワール、カイユボット、マティス、モネ、セザンヌ、ピカソ、ジョージア・オキーフなど。

モネ《睡蓮の池》(1907年)、ルノワール《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》(1876年)、セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》(1904–06年頃)など、これだけでも十分に見応えがあります。

クロード・モネ《睡蓮の池》1907年 アーティゾン美術館所蔵
クロード・モネ《睡蓮の池》1907年/アーティゾン美術館蔵 画像:Wikimedia Commons(Public Domain)
ピエール=オーギュスト・ルノワール《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》1876年 アーティゾン美術館所蔵
ピエール=オーギュスト・ルノワール《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》1876年/アーティゾン美術館蔵 画像:Wikimedia Commons(Public Domain)
ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》1904–06年頃 アーティゾン美術館所蔵
ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》1904–06年頃/アーティゾン美術館蔵 画像:Wikimedia Commons(Public Domain)

さらに20世紀側へ進むと、デュシャン、ブランクーシ、草間彌生、ジャスパー・ジョーンズなども出てきます。ソットサスを見に来たつもりが、西洋絵画から現代美術までかなり広い範囲を見ることになりました。

アーティゾン美術館へ行くなら、ソットサス展だけで予定を組まず、他の展示を見る時間も残しておくのがおすすめです。

1階ではダムタイプ《WINDOWS》も見られる

今回もう一つ印象に残ったのが、ミュージアムタワー京橋1階にあるダムタイプの《WINDOWS》です。

大きな画面には、世界各地のライブカメラ映像がいくつも現れ、場所が次々と切り替わっていきます。僕が見たときも、街の風景が複数の画面として組み替わっていくように見えて、しばらく足を止めて見てしまいました。

この作品のテーマは「視野の解放」。東京にいながら、世界の別の場所で流れている「今」を同時に見る。眺めているうちに、遠くの世界を見ているというより、自分もその同じ世界の中にいることを意識させられる作品でした。

ソットサスの色や形をめぐるデザインとはまったく違いますが、展示室を出たあとにこうしたメディアアートまで見られるのも、アーティゾン美術館の面白さだと思います。

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実際の所要時間|全体で約2時間

僕が訪れたのは2026年9月。ソットサス展は約50分、コレクション展示や同時開催展、ミュージアムショップまで含めると合計2時間ほど滞在しました。

アクセスもかなり便利です。アーティゾン美術館は、JR東京駅・八重洲中央口から徒歩5分。京橋駅や日本橋駅からも徒歩5分なので、仕事帰りや東京駅周辺に出たついでにも立ち寄りやすい場所です。

開催情報

展覧会エットレ・ソットサス —魔法がはじまるとき、デザインは生まれる
会期2026年6月23日(火)〜10月4日(日)
会場アーティゾン美術館 6階展示室
開館時間10:00〜18:00(金曜日は20:00まで)※入館は閉館30分前まで
一般料金ウェブ予約1,200円/窓口1,500円
公式サイトアーティゾン美術館 公式展覧会ページ

※開館日・料金などは変更される場合があります。来館前に公式サイトで最新情報を確認してください。

まとめ|知らないまま入ったからこそ面白かった

今回の展覧会は、僕にとって「好きなデザイナーの代表作を見に行く」展覧会ではありませんでした。

ソットサスについてほとんど知らず、ポスターに写っていた黄色い輪っかと白黒のストライプの不思議な作品を見て、「なんだか面白そう」と思ったのが始まりです。でも、そのくらいの予備知識でも十分楽しめました。

「これは何のためのもの?」という最初の疑問が、最後には「そもそもデザインって何のためにあるんだろう?」という疑問に変わっていました。ソットサスをよく知らない人にも、むしろその状態で見てほしい展覧会です。

そしてアーティゾン美術館へ行くなら、コレクション展示を見る時間もぜひ残しておいてください。ソットサスとは全く違うモネやルノワール、セザンヌ、ピカソまで同じ日に見られたことで、僕自身かなり満足度の高い鑑賞になりました。

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