同じ姿勢で眠る二人。同じように腕を振る種まき人。同じ角度で腰を曲げる農民。ミレーの作品とゴッホの模写を並べると、「似ているところ」と「変えたところ」が驚くほどよく見えてきます。
ゴッホは、農民を描いたミレーを生涯の手本として敬い、その作品を繰り返し写しました。ただし、その多くは、原画の色までそっくり再現する仕事ではありません。白黒の複製版画や写真から構図を受け取り、自分で色を考える制作でした。
この記事では、ミレーに基づくゴッホの模写19組と、主題を独自に発展させた1組、計20組を画像で比較します。左右を見比べながら、手足の位置、道具の角度、背景の線、色の響きに目を向けてみてください。
比較はすべて左がミレーの原画、またはその図案を伝える版画・素描、右がゴッホです。版画はラヴィエイユなどの彫版師がミレーの図案をもとに制作したものを含みます。同じ構図の版画を掲載していますが、ゴッホが実際に手元に置いた個体そのものとは限りません。画像はクリックして拡大できます。
《昼寝》は、2026年11月14日開幕のオルセー美術館展「いまを生きる歓び」(東京都美術館)の出品作品として紹介されています。まずは、この1組から見ていきましょう。
まずは《昼寝》《種をまく人》《歩き始め》《晩鐘》を比較
01.《昼寝》|眠る姿はそのままに、黄色と青の世界へ
模写|ミレーの図像を、ゴッホが油彩へ


見比べたいのは、頭の後ろへ回した腕、横向きになった身体、手前に置かれた靴と鎌です。干し草の山や奥の荷車まで、二つの画面は細かな配置を共有しています。
ゴッホが大きく変えたのは、色の関係です。干し草と畑の黄橙色に、衣服や影の青紫色を組み合わせました。白黒の版画では明暗として見える違いが、ゴッホの油彩では色同士の対比になっています。
眠る人の姿勢は静かなのに、その周りでは筆跡が細かく動く。休息の穏やかさと画面の強さが共存するところを、まず味わってみてください。
02.《種をまく人》|同じ動作を、自分の筆跡で描き直す
模写の比較|左は同構図のミレー油彩。ゴッホが直接用いた版画とは別の図版


大きく踏み出す足、種を放つ腕、身体の前にかかる袋。農民の動作の骨格が受け継がれています。ミレーの人物が暗い大きな塊として見えるのに対し、ゴッホは服や土を短い筆跡で描き分けています。
今回並べた2点では、人物の向きが左右逆です。ゴッホの模写は、ミレーの油彩を前に直接写したものではなく、複製版画を介した仕事です。ここでは同じ構図の系統を知る比較として、ミレーの1850年の油彩を掲載しています。
右はサン=レミで描いた《種をまく人(ミレーによる)》です。後半の19組目で紹介する、巨大な太陽のある1888年の《種をまく人》とは別の作品です。
03.《歩き始め》|親子の身振りを、緑と青で包む
写真を介した模写|ミレーの同構図作品と比較


しゃがんで両腕を広げる父親と、子どもの身体を支える母親。二人の間の空間まで、よく似ています。手前の道具や、背後の柵の線にも目を向けてみましょう。
メトロポリタン美術館によると、ゴッホは弟テオから送られたミレー作品の写真に方眼を引き、構図をカンヴァスへ移しました。この例の直接の手本は白黒の写真で、左の作品の色をそのまま写したわけではありません。
ゴッホは庭と衣服に緑や青を広げ、家族の身振りを一つの色彩空間にまとめています。子どもを見守る腕の形が共通しているからこそ、画面の空気の違いを感じやすい一組です。
11月14日(土)の開幕前にチケットを準備できます
04.《晩鐘》|初期の素描に見る、構図を学ぶ模写
模写|ミレーの油彩の図像を、ゴッホが素描へ


ミレーの代表作《晩鐘》も、ゴッホは模写しています。右は1880年10月に描いた素描です。《昼寝》などの晩年の油彩模写より約9年早く、画家として歩み始めた時期からミレーを手本にしていたことがわかります。
頭を垂れる男女、男性が手にする帽子、足元のかご、右奥の手押し車、遠くの教会。こうした配置をたどると、色彩の違いを越えて、一つの構図が受け継がれていることが見えてきます。ここではミレーの油彩原画とゴッホの素描を並べており、ゴッホが参照した複製そのものの比較ではありません。
鉛筆やチョークの線で人物と畑を捉えた初期の模写と、青や黄を響かせる晩年の模写。同じ「ミレーを写す」という行為にも、形を学ぶ段階と、自分の色で読み替える段階があると考えると、ゴッホの変化を追いやすくなります。
朝・夕・夜|「一日の四つの時」を見比べる
《昼寝》のもとになった「一日の四つの時」には、朝・昼・夕・夜の場面があります。ゴッホは四つとも油彩で描きました。ここでは、すでに見た昼に続き、残る3場面を並べます。
05.《朝、仕事に出かける人々》|ロバと二人の配置を受け継ぐ
模写|ミレーの図像を、ゴッホが油彩へ


ロバに乗る女性と、その後ろを歩く男性。男性が肩に担ぐ道具の角度まで、原図との対応を追えます。
ゴッホは二人の衣服に青系の色を置き、道と畑に暖かな色を広げました。版画の細い線で区切られていた風景が、油彩では色の面と筆の流れでつながって見えます。
06.《一日の終り》|上着を着る身振りと夕方の光
模写|ミレーの図像を、ゴッホが油彩へ


画面の中央で上着を着ようとする男性。上がった肘、まだ通しきっていない袖、足元の道具が、二つの絵をつなぐ目印です。
ゴッホは地平線の黄と、人物や畑の暗い色を対比させています。顔を細かく描き込まなくても、一日の仕事を終えた時間が感じられる。同じ身振りが光の中でどう変わるかを見てください。
07.《夜》|家族を照らす灯りを、色でつくる
模写|ミレーの図像を、ゴッホが油彩へ


かごを編む男性、針仕事をする女性、その間の揺りかご。小さな灯りを囲んで、夜になっても続く暮らしの仕事が描かれています。
版画では、灯りに近い部分と部屋の奥を白黒の明暗が分けています。ゴッホは黄の光に緑や紫を重ね、壁や床にも色を行き渡らせました。明るい部分だけでなく、影にどんな色を置いたかを見ると、翻訳の工夫が伝わります。
農作業の10場面|身体の形と道具の角度を比較
次の10組は、ミレーの図案による「野良仕事(Les Travaux des champs)」の版画と、それに基づくゴッホの油彩です。刈る、集める、縛る、紡ぐ。農作業を細かく分けて見ると、ゴッホがどれほど多くの身体の形を学び直したかがわかります。
08.《鎌で刈る人》|低く曲げた背中の輪郭
模写|ミレーの図像を、ゴッホが油彩へ


深く腰を折り、地面近くに手を伸ばす男性。背中から腰、膝へと折れ曲がる輪郭をたどると、原図と模写のつながりがはっきりします。
ゴッホは服を青く、周囲の草や土を黄や緑で描き、身体を背景から浮かび上がらせました。姿勢を保ちながら、色で人物の存在感を強めています。
09.《大鎌で刈る人》|後ろ姿と道具の斜線
模写|ミレーの図像を、ゴッホが油彩へ


今度の農民は立った後ろ姿です。開いた足と大鎌の長い柄が、縦長の画面に斜めの動きをつくります。
ゴッホの油彩では、濃い青空と黄色い畑の対比が強くなります。人物の姿勢は原図に近いまま、風景の色が一日の暑さや光を思わせる画面へと変わっています。
10.《麦束を縛る女性》|前かがみの動作を比べる
模写|ミレーの図像を、ゴッホが油彩へ


麦のそばでかがむ女性の頭、両腕、足の位置を見比べてください。縦長の小さな版画から、動作のまとまりが引き継がれています。
ゴッホは顔の細部よりも、頭巾と服、麦束がつくる形を目立たせています。地面や麦の間に置かれた黄が、女性の青い服を引き立てます。
11.《麦束を縛る人》|丸く縮めた身体と積み上がる麦
模写|ミレーの図像を、ゴッホが油彩へ


麦束を抱き込むようにして、身体を小さく曲げる人物。曲がった背中と前に出た膝が、強いまとまりをつくっています。
ゴッホの絵では、後ろに積まれた麦まで大きな黄の塊になっています。人物だけを写すのではなく、背景にも色の重さを与えている点に注目です。
12.《熊手を持つ女性》|色を離れて、輪郭を見る
模写の比較|右は油彩作品の白黒複製図版


長い熊手を持つ女性の、持ち上げた腕と下ろした腕。その二本の腕と道具の線が、ほぼ同じ位置で対応します。
右はゴッホの油彩を伝える白黒の複製図版です。原作が白黒で描かれたという意味ではありません。ここでは色の比較をせず、肩の傾き、立つ足、裾の線を見比べてください。
13.《羊の毛を刈る人々》|二人と羊の組み合わせ
模写|ミレーの図像を、ゴッホが油彩へ


女性が羊の毛を刈り、男性が羊の身体を支えています。二人の上体と、その間に横たわる羊の配置をたどってみましょう。
ゴッホは女性の青い服、男性の帽子、羊の淡い色を組み合わせ、仕事の場面を色の関係で整理しました。人物の顔より、協力する手と腕に目が向く一組です。
11月14日(土)の開幕前にチケットを準備できます
14.《麦を脱穀する人》|振り上げた道具と足の踏ん張り
模写|ミレーの図像を、ゴッホが油彩へ


頭の上へ道具を振り上げ、足を開いて立つ男性。腕の曲がり方や、屋根の下の構図が受け継がれています。
ゴッホは暗い室内を単なる黒にせず、服の青や床の黄で描き分けています。周囲の筆跡にも動きがあり、振り下ろす前の一瞬が強く感じられます。
15.《木こり》|前にかがむ姿を、緑と赤褐色へ
模写|ミレーの図像を、ゴッホが油彩へ


切り株に向かってかがむ木こりと、その後ろの木々。人物と道具を結ぶ位置関係を確認してから、背景の色へ視線を移してみてください。
ゴッホは地面や木立に赤褐色を、服に緑系の色を置いています。黄色と青だけがゴッホの表現ではないことも、連作を並べるとよくわかります。
16.《糸を紡ぐ女性》|椅子・糸車・身体の関係
模写|ミレーの図像を、ゴッホが油彩へ


背もたれのある椅子に座り、糸車へ手を伸ばす女性。大きな車輪、椅子の横棒、丸めた背中が、同じように配置されています。
ゴッホの絵では、室内の壁に緑が広がり、椅子の黄と衣服の青が目を引きます。版画の細い線で組み立てられた道具が、色を持つ形へ変わる様子を楽しめます。
17.《亜麻を砕く女性》|背中の丸みと仕事の道具
模写|ミレーの図像を、ゴッホが油彩へ


女性の後ろ姿と、身体を傾けて押さえる道具。頭から腰へ続く線をたどると、原図との対応がわかります。
ゴッホは服を淡い色で描き、暗い青の背景と黄の地面の間に置きました。小さな版画の動作を保ちながら、輪郭や影を太い筆跡に置き換えています。左は解像度の低い比較図版のため、細部より大きな姿勢に注目してください。
さらに3組|《土を掘る二人》《種をまく人》と冬の風景
18.《土を掘る二人》|二つの背中がつくるリズム
模写|ミレーの図像を、ゴッホが油彩へ


同じ方向へ腰を曲げた二人。背中の丸みと、地面へ向かう道具の斜線が繰り返されます。ゴッホは一人ずつの姿勢だけでなく、二人を組み合わせたリズムも受け継いでいます。
ミレーのエッチングでは、大地の暗い線と白い余白が印象的です。ゴッホの油彩では、土と衣服、空が異なる方向の筆跡で描かれ、画面全体に動きが広がります。
19.《種をまく人》1888年|模写から、太陽と色彩の風景へ
主題の継承・発展|直接の模写としては扱わない比較


最後は、同じ主題を独自に発展させた作品です。この1888年の《種をまく人》は、2組目の模写とは別作品で、ミレーの構図をそのまま写したものではありません。
縦長の原画では農民の身体が大きく迫ります。ゴッホの横長の画面では、人物が風景の中に置かれ、巨大な太陽と青紫の畑にも目が向きます。
人物の動作から、自然と人間の関係を描く風景へ。直接の模写と主題の展開を分けて見ると、ゴッホがミレーを学ぶだけでなく、その先の表現を探していたことが見えてきます。
20.《雪に覆われた畑と馬鍬》|人物のいない風景も、色で読み替える
模写|ミレーの冬景色を、複製版画を介してゴッホが油彩へ


ゴッホが模写したのは、働く農民の姿だけではありません。1890年1月には、ミレーの冬景色をもとに《雪に覆われた畑と馬鍬(ミレーによる)》を描きました。馬鍬(まぐわ)は、田畑の土を砕き、ならすための農具です。
左はミレーの《馬鍬と犂のあるシャイイの平原》です。ゴッホは、この冬景色を伝えるアルフレッド=アレクサンドル・ドローネーのエッチングを介して制作しました。原画の色をそのまま写した比較ではないことを押さえて見てみましょう。
手前の馬鍬、中央寄りの犂、低い地平線、空を渡る鳥の群れ。農具と遠景の配置はよく似ています。一方、ミレーの土色を帯びた大地は、ゴッホでは白や青緑の筆跡が重なる畑になりました。人物がいなくても、構図を受け継ぎ、色と筆跡で風景の印象を変える模写の方法を確かめられます。
20組を見たあとで考える|ゴッホはなぜミレーを模写したのか
働く人を主役にする姿勢に共感した
ミレーが描く農民は、風景の添え物ではありません。かがむ、踏ん張る、休むといった身体の姿に、人間の暮らしが表れています。ゴッホはそのまなざしを深く敬い、ミレーを進む方向を示す手本としました。
人物を描く学びを、晩年まで続けた
ゴッホは画家を志した初期から、ミレーの図像をたどっていました。サン=レミでの療養中にも、模写は人物の形や動きを学び直し、制作を続ける手がかりになります。若い時期だけの練習ではなかったのです。
構図を受け取り、色を自分で考えるため
白黒の版画や写真は、構図の手がかりを与える一方で、油彩の色を決めてはくれません。黄と青にするのか、緑と赤褐色にするのか。ゴッホは、その選択を自分の仕事としました。模写を色彩の「翻訳」と考えたという説明は、20組を見たあとなら具体的に感じられます。
ミレーの生涯や農民画の背景は、ミレーは何がすごい?農民画の巨匠と呼ばれる理由で詳しく紹介しています。
ミレーとゴッホの違いを整理する
| 見るポイント | ミレーの作品で注目したいこと | ゴッホが広げた表現 |
|---|---|---|
| 働く人への視線 | 農民の姿を、尊厳のある主役として描く | そのまなざしを受け継いで描く |
| 身体・構図 | 動作や姿勢を、大きな形にまとめる | 《昼寝》では配置を受け継ぎ、《種をまく人》では風景全体へ展開する |
| 色の働き | ここで比較した《種をまく人》では、土の色や人物の暗い形が印象的 | 黄色・青紫などの対比で、画面全体を強く響かせる |
| 筆跡の見方 | 輪郭や明暗がつくる人物の重さを見る | 方向のある筆跡と、色の隣り合い方を見る |
これは、この記事で取り上げた作品を見比べるための整理です。ミレーにも豊かな色彩表現があり、二人の全作品を「地味なミレー、鮮やかなゴッホ」と分けられるわけではありません。受け継いだ形が、別の色や筆跡でどう変わるかに注目すると、比較がぐっと面白くなります。
オルセー美術館展で《昼寝》を見るなら、ここに注目
2026年11月14日(土)〜2027年3月28日(日)、東京都美術館で開催される「オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び」。公式の作品紹介では、ゴッホ《昼寝》とミレー《落穂拾い》が、第2章「よく食べ、よく働き、よく眠る」の作品として紹介されています。

《落穂拾い》は《昼寝》の直接の原作ではありません。ただ、ミレーが働く人の身体をどう捉え、ゴッホがそのまなざしをどう受け継いだかを、実物同士で考えるきっかけになります。
- 最初は少し離れて、色のまとまりを見る。《昼寝》の黄色と青が、どのように目に入るかを確かめてみましょう。
- 次に、二人の姿勢と足元の道具を見る。靴や鎌を見つけると、眠りが仕事と地続きの時間であることが感じられます。
- 許された距離から、筆跡を見る。画面で見たときにはひと続きに感じた色が、実物ではどのような絵の具の跡になっているかを探してみてください。
ミレー《落穂拾い》では腰を曲げた背中や大地に近い手に、ゴッホ《昼寝》では横たえた身体や休む足に目を向ける。働いている時間と、休んでいる時間。異なる場面を描いた二人の画家を、「暮らす人間の身体」という視点で見比べると、展覧会の楽しみ方がひとつ増えそうです。
《落穂拾い》の背景や構図を予習したい方は、ミレー《落穂拾い》の意味と見どころもどうぞ。この記事の比較図版20組すべてが、今回の展覧会に出品されるわけではありません。本記事で公式の出品紹介を確認したのは、ゴッホ《昼寝》とミレー《落穂拾い》です。
《昼寝》を実物で見たい方へ。会期・休室日・料金などは、オルセー美術館展の見どころ・チケットガイドにまとめています。2026年11月1日現在、開幕前の前売期間です。チケットの販売状況や入場条件は、購入前に販売ページで確認してください。
11月14日(土)の開幕前にチケットを準備できます
ゴッホとミレーについて、よくある疑問
ゴッホはミレーの弟子だった?
ミレーの工房で直接指導を受けた弟子ではありません。ミレーは1875年に亡くなっており、ゴッホが画家として本格的に歩み始める前の世代にあたります。作品や伝記、複製版画を通して学んだ、精神的な手本と考えるとわかりやすい関係です。
《昼寝》の直接の手本は何?
ミレーの「一日の四つの時」に属する図案を、ラヴィエイユが木版にした複製版画です。この記事の1組目では、同じ構図を伝える木版画をゴッホの油彩と並べています。
ゴッホの《種をまく人》は、すべてミレーの模写?
すべてを同じ意味で模写と呼ぶことはできません。この記事で紹介した1888年6月の作品は、ミレーの主題を受け継ぎつつ、風景と色彩を独自に展開しています。一方で、ミレーの構図に基づく別の模写作品もあります。
オルセー美術館展では、何を見比べられる?
公式の作品紹介で確認できるのは、ゴッホ《昼寝》とミレー《落穂拾い》です。《昼寝》とその直接の原作を並べて見るという案内ではなく、二人が働く人や休む人をどう描いたかをたどる見方を、この記事では提案しています。
憧れの画家を写しながら、自分の絵をつくる
ゴッホにとって、ミレーは農民の姿を描く技術だけでなく、何を大切にして絵を描くのかを教えてくれる存在でした。
《昼寝》では二人の姿勢を受け継ぎ、白黒の図像を強い色の響きへ変える。《種をまく人》では、種をまく身体を太陽と畑の大きな広がりのなかへ置き直す。憧れを出発点にしながら、ゴッホは何度も自分の絵をつくり直しました。
会場で《昼寝》に出合ったら、まず二人の眠る姿を眺め、そのあとに黄色と青の関係を見てみてください。ミレーから届いた構図と、ゴッホが与えた色彩。その両方が見えたとき、この休息の風景は、少し違う奥行きを持って感じられるはずです。
関連記事:ゴッホ《ローヌ川の星月夜》の色彩と見どころ/ゴッホの代表作と所蔵美術館
参考資料
- ゴッホの書簡805・編集注(Van Gogh Letters)
- オルセー美術館|ゴッホ《昼寝》の作品解説
- クレラー=ミュラー美術館|《晩鐘(ミレーによる)》
- メトロポリタン美術館|《歩き始め(ミレーによる)》
- オルセー美術館展公式|展示構成・作品紹介
各図版の画像提供元・権利表示はキャプションのリンク先を参照。寸法は縦×横で、版画は「版面」と「紙全体」を区別しています。《歩き始め》は所蔵館と参照図版で制作年・寸法の表記に差があるため、その参照先を併記しました。
※作品画像は各図版のリンク先にある権利表示に基づいて掲載しています。版画・写真などを介した模写は、左右の向きや見え方が変わる場合があります。掲載図版はゴッホが所持した個体そのものとは限りません。展覧会情報・出品予定は2026年11月1日確認。色や筆跡の比較には、掲載図版を見た筆者の鑑賞上の解釈を含みます。
