1990年代のサイボーグ的なセルフイメージから、仏教、宇宙、科学、そして「ワンネス」へ。森万里子の30年以上にわたる活動をまとめて見る大規模個展「森万里子:燦燦(さんさん)」が、2026年10月31日から森美術館で開催されます。
日本での大規模個展は、東京都現代美術館の「森万里子 ピュアランド」(2002年)以来24年ぶり。写真、映像、立体、ドローイング、インタラクティブ・インスタレーションなど約40点で、森の活動をたどります。
この記事では、森万里子を初めて見る人にもわかるように、本展の見どころ、《Wave UFO》や《トムナフーリ》、5つの展示構成、チケット料金、日時指定予約まで整理します。
森万里子「燦燦」とは?
森万里子は、1990年代から国際的に活動してきた現代美術家です。初期にはアニメ、ゲーム、コスプレ、ファッション、CGといった当時のポップカルチャーやテクノロジーを取り込み、自らが未来的な人物として登場する写真や映像で注目されました。
その後、関心は仏教の死生観、宇宙観、科学、古代文化へ広がり、鑑賞者が作品の内部に入ったり、身体や意識そのものが作品体験になるインスタレーションへ発展します。
展覧会タイトルの「燦燦」は、森の作品に繰り返し現れる「光」を象徴する言葉です。宗教的な光、太陽、宇宙から届く光、そして知覚そのものを、作品を通して体験する構成になっています。
本展は、アレクサンドラ・モンローと森美術館館長・片岡真実による共同キュレーションで、ソロモン・R・グッゲンハイム財団の協力のもと開催されます。森の30年以上の実践を、ポップカルチャー、テクノロジー、意識をめぐる哲学まで含めて捉え直す展覧会です。
森万里子とは?|1967年東京生まれ、国際的に活動する現代美術家
森万里子は1967年東京生まれ。1992年にロンドンのチェルシー・カレッジ・オブ・アートを卒業し、1993年にはニューヨークのホイットニー美術館インディペンデント・スタディ・プログラムを修了しました。1990年代にセルフイメージを用いた写真・映像で国際的に注目を集め、その後は科学者やエンジニアとも協働しながら、宇宙、生命、意識、古代文化を扱う作品へ展開しています。
世界で評価されてきた日本人現代美術家という流れから見るなら、草間彌生とは?何がすごい?もあわせて読むと、日本の現代美術が海外でどう受け止められてきたかを比較できます。
見どころ1|1990年代の「サイボーグ」から始まる
最初のセクションでは、《スター誕生》(1995年)や「サイボーグ」シリーズなど、森万里子が国際的に注目されるきっかけになった初期作品が紹介されます。
当時まだ現在ほど一般的ではなかったCGやデジタル加工を使い、日常の都市環境に未来的な人物として自分自身を登場させる。そこには日本のアニメやゲーム、アイドル、コスプレ文化への参照と同時に、女性の身体が社会の中でどう見られるかという視点もあります。
30年前に提示された「未来の人間像」を、AIやデジタル表現が日常化した現在の感覚から見直せる点も、本展の重要な入口です。
見どころ2|《Wave UFO》を体験できる
本展の大きな話題になるのが、1999〜2002年に制作された《Wave UFO》です。
勾玉のような巨大なポッドの内部に鑑賞者が入り、脳波バイオフィードバックを用いて、自分や他者の脳波が映像へ変換される体験型作品です。森が2000年代から重要な概念としてきた、人間同士や生命のつながりを示す「ワンネス」を、見るだけではなく身体で体験する作品です。
ポッド内部への体験鑑賞枠には限りがあります。展覧会の入館日時指定とは別に、体験方法や受付条件が案内される可能性があるため、訪問前に森美術館の最新情報を確認してください。
見どころ3|宇宙のニュートリノを光に変える《トムナフーリ》
本展で、《Wave UFO》と並んで注目したいのが2006年の《トムナフーリ》です。東京大学宇宙線研究所のニュートリノ観測施設「スーパーカミオカンデ」から送られるリアルタイムデータによって発光する、トーテム状の立体作品です。
ニュートリノは、太陽や地球の大気、遠方の超新星などから飛来する非常に小さな素粒子です。《トムナフーリ》は、肉眼では見えない宇宙の出来事を光の明滅へと変換します。科学的な観測データを、知識として説明するのではなく、目の前の「光」として体験させるところに森万里子らしさがあります。
展覧会タイトル「燦燦」を、単なる明るさではなく、宇宙や生命とのつながりを示す「光」として捉えるうえでも重要な作品です。
見どころ4|仏教・古代文化・宇宙へ広がる
森万里子の作品は「ハイテクな現代アート」というだけではありません。1990年代後半から、仏教の輪廻転生、浄土、宇宙観などへの関心が強まり、2004年以降は新石器時代のケルト文化や縄文文化にも着想を広げていきます。
写真や映像の中で未来的な自己像を演じる段階から、鑑賞者自身が空間に入り、光や時間、意識を体験する方向へ。そして古代の祈りや自然、宇宙の現象へと関心がつながっていく。その変化を30年以上の時間軸で見られるのが、本展の大きな特徴です。
見どころ5|5つのセクションで30年をたどる
展覧会は、ゆるやかな年代順とテーマ別の5セクションで構成されます。
- 1. ポスト・ヒューマンから秘境の体験へ:サイボーグ、ポップカルチャー、デジタルイメージから、仏教の宇宙観へ関心が広がる初期作品。
- 2. テクノスピリチュアルな空間体験から、人類を繋ぐ「ワンネス」へ:《Wave UFO》など、科学技術と意識、人間同士のつながりを扱う作品。
- 3. いにしえの未来:《トムナフーリ》《フラット・ストーン》《お社》など、ケルト文化や縄文文化、古代の祈りと宇宙を結ぶ作品。
- 4. 自然界とつながる:森が設立したFaou公益財団の活動や、宮古島の《プライマル・リズム:サンピラー》、リオデジャネイロの《リング:自然とひとつに》などを新作映像で紹介。
- 5. 森万里子のアーカイブとスタジオ:初期のモデル時代の写真、展覧会資料、ドローイング、アイデアスケッチ、リサーチノート、古代のオブジェクトなどを展示。
初期の「未来」「人工」「都市」から、意識、古代、自然、宇宙へ。作品の見た目だけでなく、森万里子の関心そのものがどう変化してきたかを追える構成です。
森万里子の作品は現在も著作権で保護されています。ARTZUKANでは、利用条件を確認できない作品画像や展覧会公式ビジュアルを無断転載していません。実際の作品画像は森美術館の公式ページで確認できます。
会期・開館時間

| 展覧会名 | 森万里子:燦燦 |
|---|---|
| 会期 | 2026年10月31日(土)〜2027年3月28日(日) |
| 会場 | 森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階) |
| 休館日 | 会期中無休 |
| 開館時間 | 10:00〜22:00/火曜のみ17:00まで ※11月3日(火・祝)は18:00まで、11月27日(金)は17:00まで、2027年2月23日(火・祝)は22:00まで ※入館は閉館30分前まで |
開幕日の10月31日は「六本木アートナイト2026」に伴い、翌朝6:00まで開館延長予定です。夜間まで開館する特別な日に、本展の「光」をめぐる作品を見る選択肢もあります。
チケット料金|オンライン購入がお得
| 窓口 | オンライン | |
|---|---|---|
| 平日・一般 | 2,800円 | 2,600円 |
| 土日休日・一般 | 3,000円 | 2,800円 |
| 平日・学生(高校・大学生) | 1,700円 | 1,600円 |
| 土日休日・学生(高校・大学生) | 1,800円 | 1,700円 |
| 平日・シニア(65歳以上) | 2,400円 | 2,200円 |
| 土日休日・シニア(65歳以上) | 2,600円 | 2,400円 |
中学生以下は無料です。オンライン料金は一般・シニアが窓口より200円安く、学生は100円安く設定されています。
また、本展のチケットで、同時開催の「MAMプロジェクト035:ブリー・ルエイ」、「森アートアワード2026 グランプリ受賞記念展:片山真理」なども鑑賞できます。
予約は必要?|日時指定制です
本展は事前予約制の日時指定券を導入します。日時指定枠に空きがあれば当日窓口でも購入できますが、行く日が決まっている場合はオンラインで日時を押さえておく方が確実です。
2026年10月4日時点では、日時指定券の販売開始日はまだ発表されていません。森美術館は、決まり次第公式サイトで案内するとしています。
どんな人におすすめ?
- 1990年代以降の現代美術をまとめて見たい人
- アートとテクノロジーの関係に興味がある人
- 没入型・体験型インスタレーションが好きな人
- 仏教、宇宙、科学、意識といったテーマに興味がある人
- 「日本の現代美術が海外でどう評価されてきたか」を知りたい人
現代美術を実際の展示空間で見た体験を読みたい人には、UESHIMA MUSEUM(植島美術館)に行ってきた|見どころ・作品・感想もおすすめです。
まとめ|「未来的」だけではない森万里子を見る
森万里子というと、1990年代の未来的なセルフポートレートの印象が強い人もいるかもしれません。ただ、その後の作品を見ると、テクノロジーは目的ではなく、意識、宇宙、生命のつながりを体験させるための手段へ変わっていきます。
初期のサイボーグ作品から《Wave UFO》《トムナフーリ》、自然界とつながるプロジェクト、そして制作の背景を示すアーカイブまで約40点。24年ぶりの大規模個展は、森万里子の30年以上の変化を一度にたどれる機会です。
