2026年の秋、六本木。日本でめったに開催されない展覧会が始まりました。レオナルド・ダ・ヴィンチの傑作《女性の肖像》、通称《美しきフェロニエール》が日本初公開。ルーヴル美術館所蔵のダ・ヴィンチ作品が来日するのは、1974年の《モナ・リザ》以来、実に52年ぶりです。
会場は六本木の国立新美術館。「ルーヴル美術館展 ルネサンス」と題して、パリのルーヴル美術館から厳選された50点余りが海を越えてやってきます。その目玉が、ダ・ヴィンチ作とされる《女性の肖像》、通称《美しきフェロニエール》の初来日。正直、これだけでも僕は行く理由になると思っています。
この記事では、ルーヴル美術館展の見どころ、会期や料金、チケットの買い方などをまとめました。ルネサンスという言葉は知っているけど中身はふわっとしている、という人ほど楽しめる展覧会だと思うので、予習がてら読んでもらえたらうれしいです。
10月3日に日本テレビで放送された『news every. 特別編 北川景子が見つめたレオナルド・ダ・ヴィンチのまなざし』では、本展アンバサダーの北川景子さんが貸し切りのルーヴル美術館を訪れ、レオナルドの絵画に込められた「まなざし」の仕掛けをひも解きました。番組に登場した《美しきフェロニエール》は、この展覧会で12月13日まで見られます。
どんな展覧会? ルーヴル厳選の50点余りで「ルネサンス」を体感する
そもそも「ルネサンス(Renaissance)」はフランス語で「再生」「復興」を意味する言葉で、ざっくり言うと15〜16世紀のヨーロッパで大きく花開いた文化の動きです。古代ギリシア・ローマ文化が見直され、人間の能力や個性、自然界への関心が高まりました。キリスト教を題材とする作品も引き続き多く作られましたが、その表現はより現実的で、人間らしいものへと変化していきます。
本展はその豊かで複雑なルネサンスを、「旅」「技法の革新と洗練」「古代へのまなざし」「肖像芸術の隆盛」という4つのテーマで読み解いていく構成です。絵画だけでなく、彫刻・版画・素描・工芸まで並ぶので、「ルネサンス=有名な絵」というイメージが、もっと立体的に更新されるでしょう。
ルネサンスを深掘りした記事は、ルネサンスとは?生まれた背景と美術の特徴をわかりやすく解説で解説。時代の背景を知っておくと、人物の表情や身体の描き方にも目が向きます。
いちばんの目玉:ダ・ヴィンチ《美しきフェロニエール》が初来日

本展覧会の主役はこの1点。レオナルド・ダ・ヴィンチ《女性の肖像(通称:美しきフェロニエール)》1490–1497年頃です。板(クルミ材)に油彩で描かれた、63.5×44.5cmの肖像画。落ち着いた暗がりの中から、こちらをそっと見返すようなまなざしが浮かび上がってきます。
ここで注目したいのは、《美しきフェロニエール》という名前が、作品本来の題名ではないことです。現在の正式な作品名は《女性の肖像》で、公式資料では《美しきフェロニエール》は「誤って付された別称」とされています。この呼び名が定着した経緯には、別の肖像画や人物との混同があったと考えられています。描かれた女性についても、ミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァの宮廷にいた女性など複数の説がありますが、現在も特定されていません。
レオナルドの真筆とされる絵画は、世界にわずか15点ほどしか現存しないとされています。そのうち5点を所蔵するルーヴル美術館から、この傑作が日本にやってくるのは非常に貴重な機会です。
本作品の詳しい情報はダ・ヴィンチ《美しきフェロニエール》とは?モデルの謎・意味・見どころを徹底解説をどうぞ。
ルーヴル美術館展の見どころは「4つのテーマ」で読むと分かりやすい
① 旅 —— 人と技術が動いて、文化が混ざる
ルネサンスは「旅」の時代でした。交易や外交、留学のために人が動き、技法や様式も国境を越えて伝わっていく。北方の画家がアルプスを越えてイタリアで遠近法を学び、イタリアの画家が北方の緻密な油彩を取り入れる——そんな相互作用が、この時代の美術を豊かにしました。
このテーマの象徴が、アルブレヒト・デューラーの木版画《サイ》。デューラーは実物のサイを見ずに、伝聞とスケッチだけをもとにこの怪獣のような姿を彫り上げました。それでも数百年にわたって「サイといえばこれ」と信じられたほど、版画というメディアの拡散力は強かったのです。

② 技法の革新と洗練 —— 「どう作るか」も見どころ
ルネサンスの美しさは、技術の進歩と切り離せません。油彩、版画、時計、陶器、七宝(エマイユ)——さまざまな分野で「作り方」そのものが更新されていきました。
たとえばブロンズ彫刻のロストワックス鋳造法。蝋(ろう)で原型を作り、その周りを固めてから中の蝋を溶かし出し、できた空洞に溶けたブロンズを流し込む——という技法です(「失われた蝋」だからロストワックス)。古代から用いられてきた技法ですが、ルネサンス期には古代彫刻への関心の高まりとともに、ブロンズ彫刻の制作技術がさらに発展しました。小さなメダルから大型の彫像まで、多彩な表現に活用されています。

③ 古代へのまなざし —— 神話と古典への憧れ
人々は古代ギリシア・ローマを「お手本」として学び直しました。オウィディウス『変身物語』のような古典が各国語に訳され、芸術家は神話の場面をいきいきと描くようになります。このテーマでぜひ見てほしいのが、サンドロ・ボッティチェリ《5人の天使に囲まれる聖母子》1470年頃。縦58.5×横40.7cmの小さな板に、繊細で流れるような線と穏やかな色彩で聖母子が描かれた、若きボッティチェリの表現を伝える一枚です。

④ 肖像芸術の隆盛 —— 「その人らしさ」を描く挑戦
この時代、「個人」という感覚がはっきりしてきます。外見だけでなく内面まで写し取ろうとする肖像画が花開き、横顔だけでなく、斜めからとらえる「四分の三正面観」が広まりました。ダ・ヴィンチやティツィアーノは、視線やしぐさの操作で、まるで生きているような似姿を作り出しています。冒頭の《美しきフェロニエール》も、まさにこの到達点のひとつです。
これも見逃せない! ルーヴル美術館展の注目作品3選
「肖像芸術の隆盛」の章には、《美しきフェロニエール》以外にも見ごたえのある顔が並びます。中でも僕が「これは押さえておきたい」と思った3点を紹介します。
① ティツィアーノ《フランソワ1世の肖像》

ヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノが描いた、フランス国王フランソワ1世の堂々たる横顔。じつはティツィアーノは本人に一度も会わず、メダルの横顔などを頼りに描いたと言われています。それでも豪華な衣装の質感や王の威厳は圧倒的で、肖像画が「権力を演出する装置」でもあったことがよく伝わってきます。会ったこともない相手を、ここまで格好よく仕立ててみせる——僕はそこにプロの凄みを感じます。
② バッチョ・バンディネッリに帰属《ミケランジェロの肖像》 —— ミケランジェロはこんな顔だった?

《ダビデ像》や《最後の審判》を生んだ巨匠ミケランジェロは、こんな顔だった? 本作はバンディネッリに帰属される肖像で、黒い服をまとった横顔が静かに描かれています。作品ばかりが有名なミケランジェロですが、こうして「本人の顔」と向き合えるのは肖像画ならでは。ちなみにバンディネッリは、ミケランジェロのライバルとしても知られた彫刻家。好敵手が残した一枚だと思って見ると、味わいが増します。
③ ジャン・クリストフォロ・ロマーノ《ベアトリーチェ・デステ》

絵画が続くなかで、ひときわ存在感を放つのがこの大理石の胸像。モデルはミラノ公妃ベアトリーチェ・デステ、まだ十代の若き女性です。編み込んだ髪や衣装の繊細な彫りが見事で、冷たい石のはずなのにどこか体温を感じさせます。ルネサンスの肖像は絵だけでなく、彫刻やメダルでも「その人らしさ」を残そうとしました。立体で向き合うと、平面の肖像とはまた違う迫力があります。
ルーヴル美術館展のチケット情報
料金は前売と当日で少し変わります。前売のほうが一般で200円お得。中学生以下は入場無料です。
前売券の販売期間は2026年6月18日から9月8日までで、現在は当日券のみ。前売券・通常の当日券で入場できるのは9月9日から12月6日まで。12月7日から最終日の13日までは日時指定制となり、通常券とは別に日時指定券の購入が必要です。
- 前売券:一般 2,200円/大学生 1,300円/高校生 900円(2026年6月18日から9月8日までで終了)
- 当日券:一般 2,400円/大学生 1,400円/高校生 1,000円
- 中学生以下は無料
現在は当日券をアソビュー!などでオンライン購入できます。会期末の12月7日〜13日は日時指定制となるため、この期間に行く場合は日時指定券の販売状況を事前に確認してください。
開催概要
| 展覧会名 | ルーヴル美術館展 ルネサンス |
| 会期 | 2026年9月9日(水)〜12月13日(日) |
| 会場 | 国立新美術館 企画展示室1E(東京都港区六本木7-22-2) |
| 休館日 | 毎週火曜日(ただし9月22日・11月3日・12月8日は開館、11月4日は休館) |
| 開館時間 | 10:00〜18:00(金・土は20:00まで/入場は閉館の30分前まで) |
| 主催 | 国立新美術館、ルーヴル美術館、日本テレビ放送網、読売新聞社、BS日テレ |

もっと深掘りしたい人へ
展覧会を見て「そもそもルネサンスはなぜ生まれたのか?」と気になった人は、「ルネサンスとは?なぜ生まれた?」もあわせてどうぞ。フィレンツェの都市文化、美術と科学の関係、代表作までまとめています。
今回の展覧会の所蔵元、ルーヴル美術館とはそもそもどんな美術館なのか?
ルーヴル美術館とは
- パリ・セーヌ川右岸にある、古代オリエントから19世紀半ばまでの美術を扱う国立美術館。旧王宮をそのまま使っています
- 収蔵品は約50万点、常設展示は約3万点。展示面積は7万平方メートル・403室で、2025年の来館者は約900万人と世界一です
- 建物は1190年の城塞に始まり、1793年に美術館として開館。中庭のガラスのピラミッドは1989年に完成しました
以下の記事で予習しておくと展覧会がさらに楽しめます!

まとめ:ダ・ヴィンチ52年ぶり来日は、やっぱり見逃せない
ルネサンスという大きなうねりを、ルーヴルの50点余りでたどれて、しかもダ・ヴィンチの肖像画が初めて52年ぶりに日本で見られる。美術の教科書の最初のほうで習った名前たちが、実物として目の前に並ぶ体験は、やっぱり特別です。
ルネサンスから印象派までの流れをざっくりつかんでおくと、この展覧会はもっと面白く見られます。よかったら西洋美術史:驚きの名画 背後に隠された秘密とは? ルネサンスから印象派までもあわせてどうぞ。現在開催中なので、実物を見る前の予習にも使ってください。
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この絵の評価額は公表されていません。 ルーヴルの所蔵品はフランスの国有財産で、法律上、売却できないからです。
参考までに、レオナルド作とされる《サルバトール・ムンディ》は 2017年のオークションで4億5,030万ドル。
当時のレートで約508億円。 レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》に次ぐ「もう一つの傑作」が、 六本木にやってきています。

